地縁、血縁に縛られず、

志や生き方への共感で結ばれる「志縁(しえん)」で

ひとは真に自由になれる

 

 

志縁のおんな

もろさわようことわたしたち

 

信濃毎日新聞記者  河原千春 編著

 

 

 

◆ 発行:2021年12月

◆ 判型:四六判

◆ 頁数:352頁  

◆ ISBN978-4-87196-083-0

◆ 定価:3,000円+税

 

 

■内容紹介■

 

もろさわようこさんは、

1925(大正14)年、長野県北佐久郡本牧村(現佐久市)に生まれ、

65年、初の著書『おんなの歴史』を出版して注目を浴びる。

 

続けて、地方の女性史の魁とも言える「信濃のおんな」を66~68年に

信濃毎日新聞に連載し、書籍化された同書で毎日出版文化賞を受賞。

両書で、地域に暮らす多くの女性に勇気と影響を与え

 

また、戦後いち早く天皇制に異議を唱えて、女性の戦争責任を問うと同時に、

権力におもねらず市井に生きる生活者の視点から女性と社会の関わりを考察。

78~79年に底辺や辺境、極限状況で働き生きる女性たちの日常の記録を中心に

近代を省みた『ドキュメント女の百年』全6巻をまとめた。

 

さらに、既存の常識によらない「在(あ)りよう」を求めて、

地縁や血縁に縛られず、志や生き方への共感で結ばれる「志縁」こそが、

人を真に開放するという考えに至る。

 

その思想の実践を試みるため、

無組織・無会費・無規則、関わりたい人が自由に主体的に関わることが原則の

「歴史を拓くはじめの家」(現「志縁の苑」)を1982年、郷里の長野県に開設。

94年には沖縄に「歴史を拓くはじめの家 うちなぁ」を、

98年には高知に「歴史を拓くよみがえりの家」を開設。

 

編著者の信濃毎日新聞記者・河原千春さんは、2013年に初めてもろさわさんに出会う。

以来、唯一無二のもろさわさんの言葉に惹きつけられ、渾身の取材を続ける。

100歳近いもろさわさんと、1982年生まれの編者が紡ぎだす言葉は、

今を生きる私たちが、それぞれの「在りよう」を根源的に考えるヒントとなる。

 

もろさわようこさんがマスメディアから遠ざかって40年余り、

その〝空白〟の思想と実践を埋める初の書でもある。

 

「今、ぜひ読んでいただきたい」もろさわさん自身の論考12編収録(第四章)!

 

■編・著者紹介■

 

河原千春(かわはら・ちはる)

 

1982年横浜市生まれ。2007年信濃毎日新聞社入社。飯田支社、長野本社報道部を経て、文化部に異動した13年「くらし」面の取材でもろさわようこさんと出会う。

共著に『認知症と長寿社会――笑顔のままで』(新聞協会賞、JCJ賞ほか受賞)。

 

 

もろさわ ようこ

 

1925(大正14)年、長野県北佐久郡本牧村(現佐久市)生まれ。46年、北信毎日新聞記者として活動。47年より鐘紡紡績丸子工場内の学校で女子工員を教える。その後上京し、日本婦人有権者同盟会長の市川房枝に見出され、機関紙を編集。『婦人展望』などの編集者を経て執筆活動に入る。

著書に『おんなの歴史』『信濃のおんな』『おんなの戦後史』『おんな・部落・沖縄』『わが旅……――沖縄・信濃・断層』『おんな論序説』『大母幻想――宇宙大のエロス』『南米こころの細道』など多数、編著に『ドキュメント女の百年』全6巻がある。

 

■もくじ■

 

  は じ め に

 

 

  第一章 志縁へと

 

1 「嫁に行かず勉強したい女は非国民」――敗戦で「見て、考える」覚悟の芽生え

2 「私たちは一票しか闘う場所がない」――市川房枝の遺志を継いで

3 「憲法ができて七十年余り、絶望的な状況」――不戦の誓い、理念を生きる  

4 「男女差別が日常の生活文化に」――百年前から変わらない問題

5 「基本的人権、生き得ていない自分に気付いた」―― 部落問題、人間解放の原点

6 「歴史を拓くはじめの家」 宮古島の祖神祭との出合いから ――愛と祈りに未来への希望

7 「志縁は自由の中に」――「歴史を拓くはじめの家」の営みで実感  

8 「生きている限りは自分を新しく」――受難を祝福に変えていきましょう

 *「もろさわようこ」とわたしたち ①

 

 

  第二章 志縁に生きて

 

1 佐久の拠点「志縁の苑」――集う人を照らす「灯台」に

2 「今を生きるあなたが後世の女性史」――平和願う舞に生きざま

3 紡績工場の学院で学んだ教え子――「社会に貢献を」の言葉胸に 

4 部落差別に声を上げる女性たち――「あなたのままで」と励まされ 

5 集い「何か」を見いだした女性たちの記録集――営みや思い、未来に託す 

 *「もろさわようこ」とわたしたち ②

 

 

  第三章 志縁を拓く

 

1 もろさわさんは「私たちの歴史家」――どう生きれば、足元照らす    斎藤 真理子さん(翻訳家)

2 『おんな・部落・沖縄』の問題提起――女性史・ジェンダー史研究の入り口 

                             大串 潤児さん(信州大学人文学部教授)

3 スケールの大きい思想――自明の理論見直す契機 

                      平井 和子さん(近現代日本女性史・ジェンダー史研究者)

4 最も痛み深く生きる人々の場から見つめる――常に問われ続けて 

                             斎藤 洋一さん(信州農村開発史研究所長)

5 地域女性史を継承すべき歴史に――ジェンダー視点で再評価を  柳原 恵さん(立命館大学准教授)

6 女性の視点で沖縄の歴史を捉え直す――後世のために、記録し残す 宮城晴美さん(沖縄女性史家) 

7 被差別部落の女性史を明らかにする――分断と対立進む今に必要 

                         熊本 理抄さん(近畿大学人権問題研究所教授) 

 *「もろさわようこ」とわたしたち③

 

 

  第四章 おんなたちへ――もろさわようこが紡いだことば

 

『信濃のおんな』より 軍国の女たち/敗戦と女たち/きょうの女たち

『おんなの戦後史』より 戦争の共犯者/性の犠牲/女子学生亡国論/ウーマン・リブ

部落の解放と女の解放

女性史研究の中から

女もまた天皇制をつくった

「歴史を拓くはじめの家」はどうしてできたか

「歴史を拓くはじめの家」から「志縁の苑」へ

 *「もろさわようこ」とわたしたち④

 

 

  第五章 沖縄から見た〝新型コロナ〟 ―― もろさわようこが語る「いま」

 

「コロナは怖いけれども、戦争よりはましです」

1 むき出しの米国支配、容認するヤマト――問題意識持ち、連帯を

2 格差や環境、あらわになった矛盾―― 災いを福に転じる契機に

3 戦中と重なる「自粛警察」―― 主体性の喪失、主権者意識の確立を

 

 

  謝辞に代えて――拝復 もろさわようこより

  あ と が き

 

  もろさわようこ関連年表

  主な参考文献