最近の権力者や官僚たちの醜い構図を見ても明らかなように
これは決して過去の「スケープゴート」事件ではない!
公務員の立場で官・学・メディアの犯罪に敢然と立ち向かった
ある感染症予防研究者が開いた窓――
さあ一緒にそれぞれの窓を開けて
この社会の空気を入れ替えよう
大橋誠を求めて
「千葉大腸チフス事件」の冤罪を告発した疫学者
◆ 編者:飯田佐和子
◆ 発行:2018年8月
◆ 判型:四六判・上製
◆ 頁数:352ページ
◆ ISBN978-4-87196-074-8
◆ 定価:2,500円+税
■編著者紹介■
大橋 誠(おおはし・まこと)
1930年、岐阜県生まれ。国立予防衛生研究所勤務時の1966年に「千葉大腸チフス事件」が発生。その後16年にわたった裁判では、疫学者として一貫して被告の無罪を立証。厚生省の研究機関に勤務しながら、厚生省防疫課の調査を元に争う検察と「人権」を重んじる立場からの科学論争を展開した。1991年、病室で書き始めた遺著『広い窓』を刊行。1992年死去、享年61。
医学博士、日本細菌学評議員、日本感染症学会評議員、感染性腸炎研究会幹事、厚生省伝染病予防調査会専門委員、厚生省公衆衛生審議会専門委員、著書45編、原著87編、総説解説56編、学会発表306編、他編著書多数。
飯田佐和子(いいだ・さわこ)
大橋誠の娘。かわさきおやこ劇場会員。劇場運動を通して、「社会をつくっているのは私たち一人ひとりであり、皆がつながって考え話し合う、そういう人が増えることでよりよい社会をつくる」ことを目指す。
家族にとって宝物のような本『広い窓』を遺した父へのお返しとして、1999年に『大きな重い枕』刊行。
チョークアートの修業中。本書のために、装画(「父・大橋誠を求めて」)と扉絵を完成させた。
■内容紹介■
今から50年以上前に起きた「千葉大腸チフス事件」。
チフス菌をばらまき集団感染を引き起こしたとして、
当時の大学病院の勤務医が犯人として逮捕され、
多くの科学的な矛盾や疑問があったにもかかわらず、
最後は自白(相変わらずの密室での)を根拠に有罪が確定し、長期刑に服した。
しかし、彼はまぎれもなく冤罪で、
厚生省(当時)と大学とマスメディアの無責任体制のスケープゴートにされただけ。
その強固なトライアングルに敢然と立ち向かった一人の公務員疫学者の姿を、
本人の遺著や娘の手記、当時の資料などをもとに改めてたどり直す。
「科学者が、その科学的能力の貧困さから、
あるいは科学者としての社会的責任についての考えの甘さから、
知らず知らずにこのような間違った科学の利用に加担してしまう愚かさに
思いを馳せてみなくてはならないと思います。
……科学は「人類の健康で幸せな生活」
および「人権」に背を向けては存在し得ないことを
決して忘れてはならないと思うのであります。」
(本書「千葉大腸チフス事件の教えるもの」大橋誠の講演より)
■もくじ■
はじめに…………飯田佐和子
Ⅰ 冤罪「千葉大学腸チフス事件」
藪の中…………東京都立衛生研究所元所長 大橋 誠
〈参考〉一審判決後の新聞記事から 無罪支えた細菌学コンビ―千葉大チフス事件
千葉大腸チフス事件の教えるもの…………大橋 誠
再び検察の虚構を論破する―結審の千葉大チフス菌事件…………大橋 誠
大橋誠へのインタビュー 腸チフス流行を隠す歪んだ努力の数々……[聞き手]元朝日新聞記者 大熊一夫
Ⅱ 感染症予防研究者として、人として(『広い窓』大橋誠著より)
はじめに
[随 筆]痛みについて/悪性腫瘍の疑い/迷い/広い窓/出会い/於岩稲荷/含羞庵先生喜寿祝賀会/じろ飴/抱きしめてこそ/友の訃報/青き日々/目黒の思い出/骨壺/母よ
[仕 事]庁舎改築計画と研究調整会議/見果てぬ夢/コレラの研究/腸チフスを追う
[国際交流]最後の国際活動/舞踏会の手帳/アセアンの友人たち/真紅のベコニア/サンパギータ/レマン湖有情
おわりに
Ⅲ 素のままの大橋誠(『大きな重い枕』飯田佐和子著より)
[病]病/『広い窓』/サイン/初孫/父の死/骨壺/別れ
[『広い窓』その後]『広い窓』その後/三冊の黒いノート/徳川吉宗/名前
[重い枕とからすの行水]遠い日/三つ子の魂/魔法の手/おじいちゃまの花/岐阜/尊敬する人/海外出張/身上書/釣り/お酒/重い枕とからすの行水/父の映像/石ころ/卵焼き/父ゆずり/父親似 母親似
[父への手紙]七回忌/白い朝顔/父への手紙/母へのアンソロジー
セイチャン/父の日…………一色祐嘉子
皆様に支えられて…………大橋貞子
おわりに…………飯田佐和子
大橋誠の略歴
■飯田佐和子さんより■
「父(大橋誠)が生前に岐阜から持ち帰った野生の白い朝顔がようやく花を咲かせました」(2020年9月)