最新刊


 

不適応者

日本の続き

 

 

内田 謙二 著

 

 

◆ 発行:2022年11月

◆ 判型:四六判

◆ 頁数:232頁  

◆ ISBN978-4-87196-088-5

◆ 定価:2,000円+税

 

■内容紹介■

 

 この本は、小説集としては珍しく横組み(横書き)である。

それは、あえて違和感を意匠全体から発出させようと意図したためである。

ほんとうは、続編のほうは舞台が日本なので、こちらは縦組み(縦書き)にして、

本の表裏のどちらからも読める、

いわばどちらも表紙になるようにしたかったくらいなのだが、

日本の本の決まり事からそれは叶わなかった。

 

 言うまでもなく、文字の構造上、

日本語は漢字も仮名も縦書きに馴染むようになっている。

文字は言葉であり、言葉は概念であるのだから、

通常の縦書きの日本語で、ある物語を読むということは、

知らず知らずのうちに「日本」からは抜け出せない、

すなわち読む行為が否応なしに「日本」にどっぷりと

取り込まれていることにもなってしまう。

つまりは、「日本」の様式、風景、感性、慣習、しきたり、

空気など「日本の当たり前」にである。

 

 この物語は、「異国」を背景に、登場人物もほとんど「外国人」

(もちろん日本から見てであり、あちらから見れば「異国」は日本であり、

「外国人」は日本人そのものでもある)である。

それは、無意識に固定化されている「日本」のその空気、

「日本」の当たり前そのものを根底から揺り動かしたい、ぐらつかせたい、

不安に陥れたいという著者の、この物語創生のモチーフが根底にあるからである。

故に、体裁も必然的に日本語になじまない横書きになったわけである。

 

 太陽が眩しくて殺人を犯し、実母の死んだ日に情事に励む、

その非人間的な不条理性で死刑を宣告された「異邦人」ムルソー。

果たして、同じような道を辿る「日本人のムルソー」の不条理性の根っこには、

何が存在しているのか。そしてその結末は……

 装画・装丁も、この物語にふさわしく、ひと目見て、

ざわつかせ、かき乱され、居心地が悪くなり、

まるで己の否定された正体を見ているかのように眉をしかめるであろう。

 

■著者紹介■

 

内田 謙二(うちだ・けんじ)

 

1940 年3 月17 日、韓国釜山市生まれ。東京大学卒業後、フランス政府技術留学生として渡仏。パリ大学理学博士。欧州特許及び商標弁護士。現在、フランス在住。戦後すぐに富士正晴や島尾敏雄らによって発刊された文芸同人誌『VIKING』同人。

著書に『巴里気質・東京感覚』(1986)、『ヴィンテージ・カフェからの眺め』(2009)、『チャオとの夜明け』(2013)、妻ジュヌヴィエーヴ・エルヌフとの共著に『英語への旅』(2014、以上・影書房)、『増補新版 英語への旅』(2022、一葉社)がある。

 

■もくじ■

 

不適応者


くわんたむのセカイ