これは小さな事件ではない!



全検証 ピンクチラシ裁判

言論・表現の自由はこうして侵害された


清水英夫 著



◆著 者: 清水英夫

◆発行年月日:1993/10/0
◆サイズ:四六判・上製
◆ページ数:424ページ
◆ISBN:978-4-10-87196-001-4
◆定価:3000円+税


■内容紹介■

これは小さな事件ではない!


1986年12月、街の小さな印刷業者が、俗にいう“ピンクチラシ”を印刷したかどにより売春防止法違反幇助罪で起訴され、93年6月、最高裁で有罪判決が確定した。一見小さなこの事件は、しかし憲法、特に言論・表現の自由にかかわる多くの問題を含んでいる。しかも、これが判例として残る怖さは……
印刷・出版にかかわる人のみならず、表現する人=すべての人々一人ひとりにかかわる大きな事件、そして、決して黙認できない裁判——ここに、そのすべてを検証し記録する!



■目次■

はしがき/清水英夫
「(この裁判は)恣意的・差別的な検挙・起訴という権力悪の実態を明らかにし、表現の自由を守る闘いだったのである」



第一部“ピンクチラシ裁判”とは——ある印刷屋さんの災難/丸山友岐子
「この判決が確定したら、“ピンクチラシ”だろうとなんだろうと、『ほう助罪は有罪』の『判例』が生まれる。犯罪行為そのものとなんの関係もない人びとを『ほう助罪』で有罪にできるという、新しい刑罰を刑法に書き加えたのと同じ効力を持つのだ」

第二部“ピンクチラシ裁判”の問題点と危険性——印刷が幇助罪で罰せられる恐怖
●憲法違反の印刷人処罰/清水英夫
「狭義の出版行為(出版社の自由)だけが憲法の保障を受ける、といういわれは全くなく、保障されるべきは、企画から印刷、販売に至る全過程でなければならない。もし、出版物の印刷や販売が憲法の保障外におかれるとするならば、出版の自由そのものが、著しく不安定・かつ規制されやすい状況におかれることになるであろう」

●控訴審の審理と驚いた判決/小野慶二
「警察官の取り調べに際して最初に弁明したことに対し、裁判長が『どうして素直に述べなかったのか』と被告人を叱りつけるなどということは、およそ異常です。これでは、裁判所は警察と一体なのかと疑われてもしかたがないでしょう」

●矛盾だらけの一審判決/遠藤直哉
「印刷屋が仕事を依頼されたときに、その内容を厳格に点検するということは、ほとんど不可能に近いことなのに、これを要求することは、営業自体に対する著しい制約となり、営業の自由を侵害するといえる」

●幇助犯処罰規定は削除すべきである/牧野 茂
「本件では、(憲法三一条で保障されている、通常の生活さえしていれば刑法は絶対介入しないという)バリヤーを強引に突き破って、通常の営業活動をしていた印刷業者が刑法の世界に無理矢理巻き込まれてしまったのです。このような事例が生じると、私達は、常識に基づいた市民生活を送っていても、いつ警察に逮捕されるかもしれないという恐怖に脅えなくてはなりません」

●印刷屋は売春業者の「仲間」か?/竹岡八重子
「町の印刷屋さんは、売春業者と同じく、売春する女性を搾取しただろうか……いや、違う。印刷屋さんの仕事は印刷をすることである。彼はただ、印刷をしただけである。印刷したものが『ピンクチラシ』と呼ばれるものだったとしても、彼は断じて印刷屋さんである。売春業者ではない」

●英米の売春取締法/アルバート・ガスタフソン
「ピンクチラシ裁判というおかしな出来事が発生したのは日本だけであり、英国、米国でも起こっていない。つまり、日本はおかしな国であり、国際的に恥をさらしているといえる」

第三部 印刷と出版——なぜ印刷の自由か/小林一博
「経営規模が小さく資金力も弱い出版社は、印刷業者に取引きを断わられるようなことになると、たちどころに出版活動は困難になる。……印刷業者が外部から何らかの圧力を受けて、出版物(原稿)の内容を点検し、自粛するようなことをはじめたなら、出版社の活動は停止されることになる」…………



第四部“ピンクチラシ裁判”——私はこう証言した
●清水真輝雄証人(印刷時報社社長)「なぜ印刷業者も幇助罪にならなければならないのか、その意味がよく分からない、ということが全国各地からの(印刷業者の)声でした。印刷業者が幇助罪になるんであれば、ほかのそういう関係業者も全部ひっくるめて幇助罪になるんではないか」

●今井義一証人(印刷業)「何をもってピンクチラシとするのか、その判断の基準というのが、会社会社によって違ってくると思いますし、それから受け取り方一つでもって変わってくると思うんです。だから、そこいらのところを私自身が判断しろと言われたら、例えばあのチラシを作ってくれと言われたら、私自身はたぶん作ってるだろうと思います」

●桑原稲敏証人(ドキュメント作家)「ピンクチラシが売春の幇助ということであれば、(それ以上の売春情報を流し、利用度も効果も大きい)新聞、雑誌を刷っている大手印刷所とか、あるいは(その情報を流している)編集者も幇助になるかもしれないと思いますね」

〈資料〉 ●起訴状●一審判決文●二審判決文●上告趣意書●決定書
     ●関連判例●関連法令●事件年表●弁護団名簿



●著者プロフィール