「刻まれたくなかった、こんな詩集に……」

ヒトは どうして おなじ ヒトを 

それも 会ったことなどない ヒトたちまで 

飢えて死ぬほど空腹でもないのに

がばっと 殺せるんでしょうか

(本書収録の詩「問い」より)

 

もっと生きていたかった

風の伝言

 

 

 

 

 

◆ 発行:2021年7月

◆ 判型:四六判変型

◆ 頁数:128頁  

◆ ISBN978-4-87196-082-3

◆ 定価:1,000円+税

 

■著者紹介■

 

石 川 逸 子(いしかわ・いつこ)

 

1933年、東京生まれ。日本現代詩人会会員。1982年よりミニコミ通信『ヒロシマ・ナガサキを考える』全100号を編集・発行。

主な著書に、『オサヒト覚え書き―亡霊が語る明治維新の影』『オサヒト覚え書き追跡篇―台湾・朝鮮・琉球へと』(一葉社)、『歴史の影に―忘れえぬ人たち』『てこな―女たち』(西田書店)、『道昭―三蔵法師から禅を直伝された僧の生涯』(コールサック社)、『日本軍「慰安婦」にされた少女たち』(岩波ジュニア新書)、『われて砕けて―源実朝に寄せて』(文藝書房)、『〈日本の戦争〉と詩人たち』(影書房)など。

主な詩集に、『新編 石川逸子詩集』(土曜美術社出版販売)、『たった一度の物語―アジア・太平洋戦争幻視片』(花神社)、『定本 千鳥ケ淵へ行きましたか』(影書房)、『[詩文集]哀悼と怒り―桜の国の悲しみ』『ぼくは小さな灰になって…。―あなたは劣化ウランを知っていますか?』(共著、西田書店)、『狼・私たち』(飯塚書店)など。

 

■内容紹介■

 

「生きたいのに生きられなかった 数えきれないほどの ひとたち」――

打ち捨てられた死者たちに想いを馳せてきた詩人・石川逸子の哀悼小詩集

 

 

  せめて  

 

〈略〉

悔いてすむことでもあるまいし

平和のなかで 戦争の用意していて どうするの?

呆れた声は ヒナゲシか ヤモリか

平和のなかで 平和を紡ぐことの

なんという 難しさ

 

生きたいのに生きられなかった

数え切れないほどの ひとたち

 

せめて 目を閉じ

縁あった 一人の幼子の 面影だけでも

この胸に しずかに しまいましょう

 

「どうして……こんな目に」

「なぜ ぼくを殺すの なぜ?」

 

生きたかったひとたち の 必死の問いが 

大きく この星の どの地にも

谺するようになったとき

その問いに わたしたちが 深く 頭を垂れたとき

ようやく 

この星は

柔らかく 青うく 輝きはじめ

キリンの モミジの

ヒトの 子どもたちの 

かわいい笑い声が

天にひびいていくのでしょうか

 

(本書収録の詩より)

 

■もくじ■

 

問 い 8

小さな物語 11

風がきいた 13

雪だるま 16

一枚の誕生プレゼント 22

一枚の地図 29

夢に見ない町 37 

仁川の倉庫で 41

寄せる波 47 

地 図 51 

白 梅 53 

笑い声 55

大津島 58 

ヤカン 62

小さな手 64

立ったままで 69 

かすかな悲鳴 71

最前線 74

にぎりしめた手 78

小さな家 82

カエリタイノダ 84

波多先生 86

トモちゃん 90

チャーチロック 95

花桃咲く村で―阿智村の満蒙開拓平和記念館を訪ねて 98

雪 よ―ユーゴ空爆で 101

21世紀になって 103

米軍イラク攻撃―2004年・ファルージャ 104

イラクの花 108

マーゼン 110

牛のささやき 115

せめて 118

樫の木じいさん 121

 

 あとがき 124

 引用・参考文献 126