伊藤巴子 編/倉原房子 訳
D・ホールマン作品集1
水銀を飲め――
子どもの目をもっと政治に!もっと社会に!
〈もくじ〉
はじめに………倉原房子
水銀を飲め
消えた人
すすむの話
だいじょうぶ
ちいさなけしの花
D・ホールマンさんの作品しかない………伊藤巴子
私はこうするしかないのだ!………デビッド・ホールマン
◆ 頁数: 312ページ
◆ ISBN978-4-87196-077-9
D・ホールマン作品集2
ソロモンとビッグ・キャット――
子どもは誰でも時間と空間の越境者
〈もくじ〉
はじめに………倉原房子
ソロモンとビッグ・キャット
くじら
ビリー、どうしたの?
いっしょにいこうよ
レインボウ・バード
人生を変えたD・ホールマンさんとの出会い………伊藤巴子
作品集の日本での刊行にあたり………デビッド・ホールマン
◆ 頁数:288ページ
◆ ISBN978-4-87196-078-6
◆ 発行:2019年6月
◆ 判型:四六判
◆ 定価:各2,500円+税
著者のデビッド・ホールマンは、
世界で最も進んでいると言われている
イギリスの児童青少年演劇界の中でも最も著名で、
世界的にも活躍している現役の劇作家。
児童青少年演劇と言っても、
デビッド・ホールマンは、
アルゼンチンの軍事政権下で殺害された人を描く『消えた人』、
壁をテーマにした『ピースメーカー』、また難民や環境など
世界中の政治や社会の問題と向き合い作品化している。
「人も国も、富者はますます富み、
貧者はますます貧しくなりつつある今、我々の課題は大きい。
しかし我々の財力は乏しく、影響力も小さい。
それでも我々は、子どもたちに向けられる政治的、
経済的あらゆる不正義に対して闘い、
我々の持つ演劇という力でそれを阻止しなければならない。
それは時流に逆らう闘いである」
(『D・ホールマン作品集1』「私はこうするしかないのだ!」より)
日本をテーマにしたものでも、水俣病を扱った『水銀を飲め』や、
広島の原爆投下をテーマにした
『すすむの話』といった作品を収録。
「この上下二巻の作品集の中で、私の最初の作品は、
日本での海洋の汚染とそれが人間や他の哺乳動物、
鳥などに及ぼす被害を描いた一九七二年作の『水銀を飲め』です。
子どもたちを楽しませる劇ではありませんが、子どもたちの心の中の、
正義と公正への自然な欲求を刺激し呼び起こすものです」
(『D・ホールマン作品集2』「作品集の日本での刊行にあたり」より)
■著者・編者・訳者紹介■
デビッド・ホールマン
1941年生まれ。児童青少年演劇界において国際的に著名な英国の劇作家。学校巡回演劇活動(TIE)を始めた英国で、その最初のプロ劇団であるベルグレードに所属。その後、ロイヤル・シェイクスピア劇団に移り、この伝統ある劇団の中で初めて学校公演劇を制作。さらにシアター・センターに移り、芸術的にも制度的にも英国児童青少年演劇の中心的存在となるのに寄与。現在はフリーで活躍。ロンドン近郊在住。
作品は、演劇、映画、ラジオなどを含めて70本以上あり、世界中の政治・社会問題を取り扱ったものが多く、20カ国以上で上演されたものも。日本では、本書編者の伊藤巴子さんが中心になって『ピースメーカー』『すすむの話』『だいじょうぶ』『ちいさなけしの花』『ビリー、どうしたの?』『いっしょにいこうよ』などが上演され、その後も『消えた人』などの公演が続いている。
伊藤巴子(いとう・ともこ)/編
1931年、東京生まれ。54年、俳優座演劇研究所附属養成所在籍中に俳優座劇場杮落とし公演『森は生きている』で初舞台。同年、同養成所卒業、劇団仲間入団。以後、『乞食と王子』で主演(57年から通算1580公演)、『森は生きている』で主演(58年から通算2000公演)の記録樹立。
『かぐや姫』『華岡青洲の妻』『花いちもんめ』『婉という女』『人形の家』『風浪』『少年王 マチウシ』等数々の舞台に立ちつつ、中国をはじめ各国との演劇交流にも尽力。近年は、全国各地の児童青少年演劇活動も支援し、D・ホールマン作品の上演に力を入れる。日本児童青少年演劇劇団協議会代表幹事、日中演劇交流話劇人社理事長、湯浅芳子の会会長・理事長などを務める。山本安英賞、日本児童演劇協会賞、紀伊國屋演劇賞特別賞などを受賞。2016年12月、死去。
倉原房子(くらはら・ふさこ)/訳
1933年、朝鮮・京城生まれ。45年12月、日本の敗戦とともに両親の故郷・熊本に引き揚げる。大学卒業後、教員免許を取得し、英語教師に。その後、アシテジ(国際児童青少年演劇協会)日本センターの事務職となり、世界各地を訪問。本書収録作品をはじめ、D・ホールマンが託した作品のほとんどを翻訳する。