プリミティブでコアな                 
    もう一人の、いや、ほんとうの安部公房がここにいる!




運動体・安部公房

装画/桂川寛「砂の男」(『壁』初版本挿絵より)



鳥羽 耕史 著



発行年月日:2007/05/
サイズ:四六判・上製
ページ数:352ページ
ISBN:ISBN978-4-87196-037-3
定価:3000円+税


 

■内容紹介■


前衛であっても孤高ではない、
国際的な作家であっても、
それはローカリティが普遍性を持ち得た結果にすぎない——
膨大な資料を駆使し、
想像力の刃で鮮やかに刻彫した
変貌し続ける戦後復興期の越境者の実存。



安部公房は運動体の中でこそ最大の力を発揮した作家である。一九五〇年代という運動の季節は、彼の青春であると同時に、生涯で最高の輝きを放った時代なのだ。そしてその運動こそ、安部の全活動の中で、今日最も参照を必要とされる部分であろう。……硬直したイデオロギーに奉仕せず、運動体の中で自ら変貌を遂げながら新しい認識と社会を目指した安部公房を読み直すことは、今日の社会を認識し直すことにつながる。(本書「エピローグ」より)


●主な内容●


第一部 運動体の中での安部公房
1章 真善美社からの芸術運動/2章 運動体の政治化/3章〈記録〉と運動体の拡散

第二部 芸術運動と文学
4章 抒情詩人の小説——「名もなき夜のために」/5章「変貌」とリアリズム論争——「デンドロカカリヤ」/6章 共同制作としての書物——初版『壁』/7章 S・カルマ氏の剽窃——初出「壁」/8章 寓話と寓意——「詩人の生涯」

第三部〈記録〉の運動と政治
9章 コラージュ・ルポルタージュ——「夜蔭の騒擾」/10章 書割としての〈記録〉と〈家〉——『飢餓同盟』/11章 国境をめぐる思考——『東欧を行く』/12章 ミュージカルスという〈記録〉——「可愛い女」/13章〈記録〉という名の推理小説——「事件の背景」/14章 視覚の手ざわりへ——『砂の女』

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