あの時代(暗い夜)、それでも世の趨勢に抗して
恋と食と書に明け暮れた自由人の“非国民”日乗
杉浦明平 暗夜日記1941-45
戦時下の東京と渥美半島の日常
◆ 発行年月日:2015/06
■内容紹介■
危機的な今、
警鐘と予言、そして意外性に満ちた
戦後文学者の戦時下日記を初公開!
「敗戦後に一箇の東洋的ヒットラーが出現し、民を殺すことを草を薙ぐごとく、……粛然として声なからしめるかもしれないのである。しかしてその可能性は、あらゆる民衆利益の擁護者を掃蕩することによって、今日本においては準備せられつつあるのだ。まことに陰惨苛烈なる運命が日本人の前には待っているといってよい。歴史を正しく成長させねばならぬ」(1944年1月19日の日記より)
杉浦が文芸評論家として注目されたきっかけは、日本浪曼派など戦争に協力的だった文学者への厳しい批判にあった。杉浦の闘争的な評論家というイメージの多くはこの頃に作られた。日本浪曼派への憎悪とも言える激しい杉浦の言辞を痛快と受け止める人がいる一方で、敗戦後の右から左への大転換の潮流にのったという反発もあった。日記からは、杉浦の歩みにぶれも転換もなかったことが明らかになる。そこには暗い夜の谷間を雌伏して生きる杉浦の思想や感情が飾らぬ言葉で書かれ、戦時中と戦後が一直線につながっている。(本書「まえがき」より)
【書評】