最新刊


よみがえる劇作家・宮本研の肉声によって

演劇ならではの空間と時間を超えるまなざしを再発見!

 

 

宮本研 対話コレクション 

芝居に正答はない、ただ問うのみ

 

 

宮本 新  編

 

 

◆ 発行:2024年8月

◆ 判型:四六判上製

◆ 頁数:504頁  

◆ ISBN978-4-87196-094-6

◆ 定価:4,500円+税

■内容紹介■

  

戦後を代表する劇作家・宮本研の、木下順二や水上勉、木村光一などとの対談、

座談会、インタビュー等のほとんどを収録した演劇関係者必読の貴重な1冊。

 

「戦後の危機の今よみがえる/戦後を代表する劇作家の肉声」――

この対話集のキャッチフレーズである。

確かに「戦後」は風前の灯。

マスメディア総動員で事あるごとに「敵国」とみなしている中国と、

明日どんぱちが始まっても不思議ではない。

それも「防衛」という名の、この国からの「敵」基地攻撃を端緒として。

かの国に、取り返しのつかない加害を加えてから、

まだ100年も経っていないというのに……

 

 劇作家・宮本研の原点は、その「敵」中国にある。

結果的に中国侵略の片棒を担いだ者の子息として、

決して整理できないその時間をずっと曳きずりながら、

「戦後」を彷徨い、この国の「近代」に劇作で挑み続けてきた。

「国家」はもちろん、「歴史」や「民衆」までも疑いの目を向け、

答えのない?を連発しながら。

 

 戦後を代表する劇作家で、もう一人欠かせないのが木下順二。

この二人は、劇作のスタイルも匂いも真逆だが、共通点も意外に多い。

例えば宮本研の代表作の一つ『明治の柩』は、

木下順二と縁の深い山本安英の「ぶどうの会」からの依頼で執筆。

しかし、実は田中正造を主人公にした戯曲は、木下順二が最初に計画していたという。

では、なぜ木下はやめて、宮本は書き上げたのか。

そのことについても触れた二人の対談が、この本の最初に載っているが、

空間や時間を超えて多角的・根源的に考えさせる。

 この二人の対談をはじめとして、多彩な演劇関係者が登場して対話する本書は、

芝居の本義と価値、そして覚悟を突きつける。

懐疑と批判が消えることがいかに危ういか、と

 

 

■著者紹介■

 

宮本 研(みやもと・けん)

1926.12.2―1988.2.28

劇作家。熊本県生まれ。幼少期を天草、諫早で過ごし、1938年父親の勤務地の北京へ渡り、44年帰国。50年、九州大学経済学部卒業。高校教員を経て法務省に勤務。在職中に演劇サークル「麦の会」で作・演出等を担当、演劇界へ。62年に法務省を退職し、以後劇作家一本に。同年、『日本人民共和国』『メカニズム作戦』で第8回岸田戯曲賞、翌63年『明治の柩』で芸術祭奨励賞を受賞。

 

その他の作品に、『僕らが歌をうたう時』『人を食った話』『五月』『反応工程』『はだしの青春』『ザ・パイロット』『美しきものの伝説』『阿Q外傳』『聖グレゴリーの殉教』『櫻ふぶき日本の心中』『夢・桃中軒牛右衛門の』『からゆきさん』『ほととぎす・ほととぎす』『冒険ダン吉の冒険』『花いちもんめ』『ブルーストッキングの女たち』『次郎長が行く』『うしろ姿のしぐれてゆくか』など。『筑紫の恋の物語』(近松)、『雪国』(川端康成)、『嘆きのテレーズ』(ゾラ)などの脚色も。エッセイは500篇を超え、それらを集めた『宮本研エッセイ・コレクション(全4巻)』(一葉社)がある。

 

[編集]

宮本 新(みやもと・しん)

宮本研の長男。

 

 

■もくじ■

 

●対 談

沖縄のイメージ・渡良瀬川のイメージ  木下順二

芝居こそ諸芸術の王――現代の演劇とその可能性  福田善之

創作余話  水上 勉

『美しきものの伝説』  武井昭夫

民衆・みんしゅう考  松本俊夫

新劇よもやま話  渡辺美佐子

戯曲『飢餓海峡』を語り合う  水上 勉

宮崎滔天の夢  大谷竹山

『贋作・花のノートルダム』とジュネ  吉岩正晴

いま「幸福で自由な民衆」は?  木村光一

男たちは女の掌の中で夢みる  大笹吉雄

 

インタビュー・発言

宮本研が戯曲を書くのをやめると宣言⁉︎

これからの演劇への提言

ベトナムを書きたい――〝告白劇〟では豊かな経験

舞台芸術『ベトナム』まえがき

非英雄の時代の主人公

〝大正〟を生きた群像  聞き手・森 秀男

『阿Q外傳』余話

被爆の呪い いずこ――戯曲『ザ・パイロット』

劇作家の椅子  聞き手・戸板康二  

「中国大使館抗議事件」――事実関係を中心に  聞き手・梅本 聰 

映像で捉える日中友好の歴史

わかり易く、そして面白くなければ、芝居はなりたたない――「革命伝説劇」から『からゆきさん』へ  聞き手・毛利昭義

劇作家は現在何を考えているか  聞き手・和氣 元

『冒険ダン吉の冒険』におけるわたしの冒険

傷ついた体験が愛の心を育む――愛を知るための賢い女の行動学

戯曲『次郎長が行く』を書いた宮本研  聞き手・森 秀男

もっと軌道にのせて、もっと大胆に――伝承と創造

 

●座談会

討論・戯曲『日本人民共和国』  木下順二、竹内敏晴、西島 大、日高六郎

新劇運動の可能性――その閉鎖性を破るもの  瓜生良介、観世栄夫、木村光一、高山図南雄

革命・文学・民衆  尾崎秀樹、武田泰淳

神様と革命と  石澤秀二、矢代静一

『明治の柩』から『聖グレゴリーの殉教』へ――「革命伝説四部作」について  尾崎 信、木村光一

『明治の柩』をめぐって  石澤秀二、観世栄夫、木村光一

エリザベス朝演劇の魅力  小田島雄志、木村光一

受難と黎明――『日本社会主義演劇史』刊行を機に  木下順二、松尾尊兊、松本克平

文化大革命後の中国演劇――日本演劇家訪中代表団座談会  江守 徹、佐々木愛、千田是也

宮崎滔天を語る  上田弘毅、北岡豊治、宮崎蕗苳、吉永二千六百年、吉村公三郎 

ウェスカーはわれらの同時代人  木村光一、扇田昭彦 

水上勉と『金閣炎上』  大笹吉雄、野村 喬 

『明治の柩』初演から二十年  新井和子、高木範子、田中俊満、田村紀雄 

「母なるもの」をめぐって  木村光一、水上 勉 

 

編者註  

宮本研についての若干のメモ  大笹吉雄

あとがき  宮本 新